3人が本棚に入れています
本棚に追加
「ヨシノにごめんとありがとうをいえなかったこと、だって」
ハルヤさんのその台詞で察しました。ハルさんは、自分の嘘を見抜いていたことに……。
ーー何年経っても、ハルさんは、ハルさんなんですね……。
最後に見たのは泣き顔でしたが、今は笑っているのでしょうか。彼女が幸せなら、自分はーー。
「あ。そういえば、こんなのもよくいってた。いちばんすきなのは、やっぱりヨシノだ、って」
『そう、です……か』
あんなに冷たくあしらい突き放したのに、彼女がそんな風に思っていたとは想定外です。
『ハルヤさん、ハルさーーひいお婆さんは、まだ生きてますか?』
「ううん、もういない」
『そうですよね……』
ハルさんが今でも生きていたら、百歳を越えています。ですが、少年の言葉を聞いて伝えて欲しくなりました。
『ハルヤさん、ひいお婆さんのお墓まで伝言を頼みたいのですが』
「いいよ、なんだ?」
『私はハルさんのことをずっと愛してますよ』
言い切った瞬間、自分の生命が瞬く間に小さくなるのを感じます。ふと枝を見ると散ることのなかった花びらが舞い散っています。
こうして、狂い咲きの桜としての自分の命は、唐突に終わりを迎えました。
最初のコメントを投稿しよう!