そして、狂い咲きはーー

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「ヨシノにごめんとありがとうをいえなかったこと、だって」 ハルヤさんのその台詞で察しました。ハルさんは、自分の嘘を見抜いていたことに……。 ーー何年経っても、ハルさんは、ハルさんなんですね……。 最後に見たのは泣き顔でしたが、今は笑っているのでしょうか。彼女が幸せなら、自分はーー。 「あ。そういえば、こんなのもよくいってた。いちばんすきなのは、やっぱりヨシノだ、って」 『そう、です……か』 あんなに冷たくあしらい突き放したのに、彼女がそんな風に思っていたとは想定外です。 『ハルヤさん、ハルさーーひいお婆さんは、まだ生きてますか?』 「ううん、もういない」 『そうですよね……』 ハルさんが今でも生きていたら、百歳を越えています。ですが、少年の言葉を聞いて伝えて欲しくなりました。 『ハルヤさん、ひいお婆さんのお墓まで伝言を頼みたいのですが』 「いいよ、なんだ?」 『私はハルさんのことをずっと愛してますよ』 言い切った瞬間、自分の生命が瞬く間に小さくなるのを感じます。ふと枝を見ると散ることのなかった花びらが舞い散っています。 こうして、狂い咲きの桜としての自分の命は、唐突に終わりを迎えました。
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