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春は桜の咲く季節とよく言われます。ですが、冬に咲く寒桜や秋に突然咲く狂い咲きというのもあります。けれど、自分は普通のとも特殊なのとも異なる、異例のもの。
それはーー季節関係なく年中咲き続ける『狂い咲き』。舞い散ることを知らないのです。
ーー何故、私だけ皆と同じように生きられないのでしょう……。
そんな風に思うこと、何十年。色褪せた日々を彩ってくれたのは、他でもない……あなたと出逢えたから。あなたと初めて出逢ったことは、今でも昨日のことのように思い出せます。
大体の木々が枯れ葉を大地に落とし、色彩の少なくなる季節の時です。あの日は北風寒くカラリとよく晴れた日のことでした。
『今日は一段と冷え込みますね……』
人間ならため息をつきたいところですが、生憎自分は桜の木。そんな芸当はできません。いつものように、ぼんやりと道行く人々を見ていました。その時です。
「あっ、桜だっ!!」
よく通る凛とした弾んだ声が聞こえてきたのは。
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