バレンタイン・メッセージ

今度の火曜はバレンタインデーなのだ。

その日には恋人だけでなく、親愛の情を示したい相手には誰にでも贈り物ができる。

「ジム、全員乗った? 」

サポートスタッフの一人がバスの窓から顔を出した。

「ああ。よろしく」

遠ざかるバスを眺めながら何故かため息が出た。

バレンタインデーか。

そんなものにはもうずっと縁がない。

心から愛した女性を病で失ってからは。

俺もこのまま年を取り、こういうホームに世話になり、そして……

（孫にチョコをあげようにも子供すらいないな）

思わず苦笑が漏れた時。

キュっと音がして目の前に車が止まった。