第一章 めぐり逢い

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宮崎の小さな田舎町。 収穫を終えた畑では土が顔をあらわにし、 枯れた草花は色をなくし、 あんなに綺麗な桜の木も、 今は着飾る服もなく、 細い枝が寒さに凍えていた。 例えるならば、 モノクロの写真の中に入り込んだみたいに、 僕の世界には色がなかった。 まるで犬の気分だ。 だけど僕は犬みたいに冬が好きなわけじゃない。 小さいころに聞いた歌の歌詞にあったようにコンコン鳴いて走り回ったりしないし、 大体こんな南国の県と言われる宮崎では雪が降るのは、 何年かに一度と稀なことだった。 僕はそんな見慣れた景色を瞳越しに見ていたが、 鞄からごつごつとしたカメラを取り出し、 今度はフィルター越しに景色を覗いた。 殺風景だった景色もレンズ一枚通してみるだけで、 変わって見えた。 アングルを考え、 また露出も気にし太陽の光を取り入れながら、 シャッターを切ろうとした瞬間だった。 時間にすれば、 何秒だろうか?秒針が動く速度よりも早いかもしれない。 木と木の間を、 長い髪がふわりと冬の風に吹かれ、 フィンダーに入り込んだ。 その髪色は柔らかな茶色でまるでチョコレートみたいに女の子らしく、 綺麗な色だった。 僕の君への第一印象はまさしくチョコレートだった。
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