episode210 エーロスとアガペー

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「でもね、和樹」 九条さんは僕の身体を抱き起すと 「僕は征司くんの言い分ももっともだと思う」 まるで 冗談みたいに言った。 「……九条さん?」 「彼の言うとおり、僕が君への愛をもっと神聖なものへと昇華することができたなら――それでみんな幸せになれるのかもしれない」 もともと 繊細な人だ。 「そんなの、違うよ……!」 「ねえ和樹、今までよりもっともっと君を愛すから」 「でもっ……」 「そうすれば大切な人たちを傷つけず、一生君の傍にいられる」 それに 誰よりも優しい――。
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