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『森下くん……森下くん!!』
イヤホンから叫ぶようなプロデューサーの声。
途端に周囲がざわついた。
ぼんやりと見渡せば、スタッフがカンペを振り上げて、とにかく話せ!と声には出さないが叫んでいた。
ここはどこだ?
俺は、何をしてるんだっけ?
ここに伊織はいない。
天井を仰げば、強い照明をダイレクトに受けて、一瞬にしてホワイトアウトする。
そして白くなった世界を真っ暗な闇が侵食していった。
その闇が伊織の記憶が眠る深い海の底のような気がして、感情が飲み込まれていく。
涙が止めどなく溢れて、何も出来ず、何も言えず、記憶の眠る深い海に思いを馳せていた。
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