31人が本棚に入れています
本棚に追加
* * * *
『廉、もう大丈夫だから。俺が傍についてるから。』
耳元でそう囁いたその声は誰?
優しく包み込むこの手の温もりは?
問い掛けたいけど、思うように声が出ない。
それでもその言葉にひどく安堵して、意識を深く沈めて眠りについたのは覚えてる。
目が覚めて最初に視界に映ったのは、啓祐の心配そうな顔だった。
何度か瞬きを繰り返し、焦点が合うにつれて体中の細胞が一気に覚醒する。
あれほど冷えきっていた体は、いつの間にか熱を放って不快感が全身を覆っていた。
自分の置かれている状況が飲み込めずに啓祐に視線を移せば、視線が合った瞬間にぎゅっと握られていた手がパッと離れた。
「どっか痛い所ない?」
いつになく柔らかい口調。
何度となく互いの額を行ったり来たりしているその手に、不思議な感覚を覚えた。
.
最初のコメントを投稿しよう!