きみがいなければ ー廉ー

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   *  *  *  * 「……熱は、大分下がったみたいだね。」 一人納得する啓祐に、妙な違和感を感じる。 確か部屋を抜け出し、雪の中に埋もれて。 伊織のいない事に、ひどく疲れてしまったんだ。 指一本動かす気にならなくて、絶望が体を支配して何も考えずに楽になりたいと諦めた。 そのあとの事はよく覚えていない。 誰かに何度も呼ばれた気はしたけど。 あれは…… あれは伊織の声だったか? キョロキョロと辺りを見渡して思い出そうとすれば、途端に頭痛が襲いかかって思わず顔が歪む。 痛みに耐え兼ねて目を瞑れば、瞼の裏に陰が出来た。 たぶん傍にいた啓祐が、心配して覗き込んでいるに違いない。 大丈夫だと言葉にしたいのに、ひどい倦怠感に声を出す事も億劫だった。 .
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