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「いい加減にしなよ!伊織くん!伊織くん!伊織くん!!……少しは自分の事を気にしろよっ。大事にしろよっ。どれだけ心配掛ければ気が済むのさ!マジで、すっげー探したんだからね!!……ったく。あのままだったら、死んでたよっ!」
意識がなくなる少し前……
確かに電話の向こうから、伊織の声が聞こえた気がした。
もう自分の道を進めと、諭すあいつがいた。
自分とは違う進むべき道があるのだと。
だけどそれを受け入れる事など到底出来ないから、それを拒絶した瞬間にひどく疲れて、雪の中で意識が途切れたんだ。
きっと啓祐が見つけてくれなかったら、本当に死んでいたかもしれない。
「どうしようもない馬鹿っ!みんなに心配掛けて、挙句に行方不明になって雪に埋もれて。何やってんだよ!伊織くんは生きてるんだよ?また記憶が戻れば廉ちゃんの元に何もなかったように戻ってくるんだ。その時に伊織くんが今日のことを知ったら、どんな気持ちになるか考えた事あるの?陽平くんだって、慎だって、何度も何度も心配して電話してきたんだから。…とにかく!!お気に入りの皮ジャンは雪に濡れてダメになるし、寝不足だし、風邪引きそうになったし、やっと目が覚めたかと思えば、第一声は伊織くんだし……」
そこまで一気に怒鳴ったかと思うと、突然黙り込んだ。
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