30人が本棚に入れています
本棚に追加
* * * *
「啓‥祐……?」
「死‥んじゃうかと思ったんだから……死んじゃったらどうしようって……俺‥っ‥判れよ…廉ちゃんを好きなのは伊織くんだけじゃないんだよ?メンバーみんな、大好きなんだからね。廉ちゃんがいなくなったら……死んじゃったら……大事な人が目の前からいなくなる辛さ、一番良くわかってるだろっ。僕だって廉ちゃんがいるから‥…廉ちゃんがいなきゃ…君がいなきゃ…馬鹿っ!!」
苦しそうに顔を歪め、くるっと啓祐は背中を向けた。
その背中が震えている。
「啓祐……」
しばらくの沈黙と鼻をすする音。
そして急に柔らかい口調で啓祐が小さく呟いた。
「まったくしょうがないよね……こんな人、好きになった自分が悪い。」
自分の怒りに踏ん切りをつけるかのように大きく深呼吸繰り返し、次に振り返ると苦笑しながら額のタオルを交換した。
その目が真っ赤に充血していて。
視線が合った瞬間にバツが悪そうにタオルで俺の視界を覆った。
俺は寄り掛かるだけ寄り掛かって、何にも見えていなかった。
いや、目の前で苦しそうにしていた啓祐を見ようとしなかった。
.
最初のコメントを投稿しよう!