196人が本棚に入れています
本棚に追加
コーヒーをいただいてカップを置いて立ち上がるとフラッと体が横に揺れた。
咄嗟に腕を伸ばしてくれた虎王さんに支えられる。
「あ、ごめんなさい」
「熱が高いぞ」
「いつものことだから。このくらい大丈夫、…えっ!?」
額に手が伸びたかと思ったら、ひょいと横抱きにされてふかふかのソファーに寝かされた。
「部屋には戻れないならここで寝てろ。おまえを襲ったりしない」
「でも」
「眠れば熱も下がる」
虎王さんはすぐそばにあった膝掛けを掛けてくれた。
隣に座り、そのまま途中の本を読み始めた。
朝方の静かな空気。
まだ鳥の声も聞こえない。
「寝ろ」
命令に目を閉じると、穏やかな気配にすぐに眠気がやって来た。
「わたし、…この香り知ってる…」
香り。
夏の朝の香り。
ずっと前にどこかで……
でも思い出せない。
けれど安心する。
この香りに包まれてる時には怖いものなんてない……
懐かしい香りに誘われいつしか眠りにおちた―――
最初のコメントを投稿しよう!