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「お嬢さまは熱が下がったばかりで」
「あきさん、大丈夫よ。すごく気分がいいから」
「でも」
カーディガンを羽織り帽子を被って足の速い虎王さんの後についてく。
ついてくのがやっとで足がもつれて走れない。
「あ!」
転びそうになって、
「悪い、速かったな」
後ろを振り向いた虎王さんが抱き留めて、都合悪そうにふいっと顔が横向けた。
「わたしがトロいから、ごめんなさい」
「…違う」
虎王さんは腕を解くとそのまま歩き出した。
歩き出した虎王さんが怒ってるような気がして踏み出せない。
来ないのか?と立ち止まられて初めてついて行っていいとわかった。
「いいの?」
「いいに決まってるだろ」
無愛想に低い声で答える。
「行かないのか?」
「行く!」
答えたわたしにふっと笑ったような気がして足が軽くなった。
ホントは少し優しいのかもしれない。
気持ちが明るくなって虎王さんを見上げるとその背中がとても暖かく見えた―――
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