『若恋』 想い出の恋

7/50
前へ
/52ページ
次へ
―――――――――― ――――――― ――――― 「…38度5分」 三津谷おじさまの別荘に来て次の日には熱を出した。 ベッドの横には乳母のあきさんが付き添い眠ってる。 夜中じゅうずっとついていてくれたせいで疲れてる。 あきさんを起こさないようにベッドから抜け出すと、一階に灯りが点いていた。 「…起きていいのか?」 「虎王さん」 本を読んでいる虎王さんはわたしをちらりと見上げた。 「あきさんを眠らせててあげたくて」 答えると「そうか」それっきりまた本に目を落とした。 階段を降りて虎王さんがいる席の向かいのソファーに座ると、素っ気なく上着を脱いでわたしに投げた。 「着てろ。夜は冷える」 虎王さんの上着を袖を通すと日向の匂いがして暖かかった。 ふと虎王さんが読んでる本を見ると経済学と書いてある。 経済学? 「いずれ必要になる時代がくる。覚えておいて損はない」 よくわからないけど力だけの時代は終わったと思う。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加