龍琉の恋

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春の宵。 白い雪のような花びらが宙を舞う。 見上げる先には見事な垂れ桜の樹。 「龍琉さま、もうパーティーへお戻りにならないとお客様が……」 「わかってる」 つまらないパーティーにため息。 父の顔を立ててパーティーに出たものの視線で俺を誘う女ばかりで面白くもなんともない。 大企業の社長令嬢。 旧華族の姫君。 政財界を裏で仕切る女たち。 三津谷財閥の跡取り息子と知って近づいてくる者ばかり。 「龍琉、ここにいたのか」 「玲央か、悪かったな。パーティーに呼び寄せて」 言い寄る女たちから逃げて庭に出てタキシードの蝶ネクタイを外して首元を緩める。 同じように玲央もタイを外すと苦笑いした。 「まるでお見合いパーティーだもんな。あれじゃ」 べつに女が嫌いなわけじゃない。 ただ、好きにはなれない。 どんな女も同じに見える。
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