1/3
前へ
/32ページ
次へ

チョコレートを買わせるーそのターゲットは優花。 とにかくドンクサイ。そしてどこかズレてる。 初めて話した時は、木の下に座ってた。 * 高二の冬、引退試合の前だった。 勝つためには俺のシュート力の強化が必要だって、キャプテンの宗一に、練習後の100本シュートを命じられた。 人にやらせて宗一は帰る。 なんじゃそりゃとは思うけど、とにかく勝ちたかった。 100本終わって片付けると19時を廻る。 暗くなった校庭を横切って正門に向かった時、小さな声で誰かに呼ばれた気がして、びびった。 誰もいないと思っていたから。 正門の側の花壇に誰かが座っている。 木に凭れて。 再び、びびりながらよく見たら女子。 「オマエ、何してんだ?」 一年の時のクラスメート吉川優花。あまり話したこともなかった。 『ごめん、大野くん。バスケの練習?』 質問に質問で返すな。 「だからオマエは何してんだよ。そんなとこで。」 優花は恥ずかしそうに笑った。 『誰か、通らないかなって。』 「なんで?」 『動けないし。あの、ごめん、大野くん大きいからとどくかもしんないから。』 その時、気がついた。上の方で何か聞こえる。 猫? 『あの子、降りれないみたいなの。』 優花が凭れている木の上の方から、猫の声がする。 目をこらすと、かろうじで見えた。 「オマエ、もしや登ったの?スカートで?」 優花は少しスカートをめくった。 『大丈夫。ジャージ履いたから。』 いや、そういう問題ではないだろ。 優花のそばには、折れた木の枝があった。 『子供のときは木登り得意だったんだけど、重くなったみたい。』 だからそういう問題ではないな。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加