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Ⅱ
チョコレートを買わせるーそのターゲットは優花。
とにかくドンクサイ。そしてどこかズレてる。
初めて話した時は、木の下に座ってた。
*
高二の冬、引退試合の前だった。
勝つためには俺のシュート力の強化が必要だって、キャプテンの宗一に、練習後の100本シュートを命じられた。
人にやらせて宗一は帰る。
なんじゃそりゃとは思うけど、とにかく勝ちたかった。
100本終わって片付けると19時を廻る。
暗くなった校庭を横切って正門に向かった時、小さな声で誰かに呼ばれた気がして、びびった。
誰もいないと思っていたから。
正門の側の花壇に誰かが座っている。
木に凭れて。
再び、びびりながらよく見たら女子。
「オマエ、何してんだ?」
一年の時のクラスメート吉川優花。あまり話したこともなかった。
『ごめん、大野くん。バスケの練習?』
質問に質問で返すな。
「だからオマエは何してんだよ。そんなとこで。」
優花は恥ずかしそうに笑った。
『誰か、通らないかなって。』
「なんで?」
『動けないし。あの、ごめん、大野くん大きいからとどくかもしんないから。』
その時、気がついた。上の方で何か聞こえる。
猫?
『あの子、降りれないみたいなの。』
優花が凭れている木の上の方から、猫の声がする。
目をこらすと、かろうじで見えた。
「オマエ、もしや登ったの?スカートで?」
優花は少しスカートをめくった。
『大丈夫。ジャージ履いたから。』
いや、そういう問題ではないだろ。
優花のそばには、折れた木の枝があった。
『子供のときは木登り得意だったんだけど、重くなったみたい。』
だからそういう問題ではないな。
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