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Ⅲ
優花はいつものようにコンビニに寄る。
そしてお菓子の棚に。
よっし、普通のチョコを買え!
優花は小さなチョコレートの箱を取った。
そーだ!それを買え!
でも棚に戻すとおつまみコーナーに行く。
優花は、柿の種がチョコレートでコーティングされているのを手に取る。
なんだよそれ!柿の種は柿の種、チョコはチョコで買え!
俺の願いもむなしく、優花は柿の種チョコを買った。
ダメだよなあ。イチゴ味がダメなんだから、柿の種はなおさら。
家に帰った彼女は、冷凍庫のカレーとコンビニのサラダを食った。
優花は昔から、休みの日に一日かけてカレーを作る。泣きながら大量の玉ねぎを切って茶色くなるまで炒める。
俺は優花のカレーが好きだった。
普通の市販のルーだけど、うちのとは違う味。
丁寧に丁寧に作られた味。
いつだったかな、おまえがあんまり泣きながら玉ねぎを切るから、俺のゴーグルを貸してやったんだ、水泳用の。
ゴーグルをつけて、玉ねぎを切っているおまえの姿に爆笑したな。
あの頃は、ほとんど俺が食っちまうから、冷凍になんかしなかった。作ってくれた日の夜に、二人で食って、次の日の朝、俺が一人で完食した。
『えっ?もうないの?』
最初の時、夜に来たおまえは驚いて目を見開いてた。
おまえの丸一日の労力を、あっさり食っちまった俺に、驚いたあとおまえは言ったよな。
『いっぱい食べてくれてありがとう。』
嬉しそうに。
今、優花の冷凍庫の中には、保存容器に入ったカレーがいくつもある。何日もある。
昨日もそのメニューだったよな。違うもん食えよ。料理はうまいじゃねーか。なんで毎日カレー食ってんだよ。
作る量、考えろよ。
ドンクセーなあ。
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