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Ⅳ
俺の課題は達成されないまま、数日が過ぎる。
今日はすっきりしない天気だった。
雨が降ってきたのはついさっきだ。
でも大丈夫だろ?オマエの鞄の中には、小さな傘が入ってるもんな。
小さすぎて、役にたたなかった折りたたみ傘。
オマエ一人なら大丈夫か。ちいせーから。
相合い傘するのには、その身長がアダだったけどな。
*
あれは京都だったよな。
急な雨に降られて、オマエはその小さな傘を出した。
でも、俺が差すとオマエがびしょぬれになるし、オマエの身長に合わせたら、俺の胸の高さだから。
そもそも俺たちに、相合い傘は無理だったんだけどな。
あの日、二人で傘を差しながらずぶ濡れになった。
だから電車に乗る前に服を乾かすって口実で、ホテルに誘ったんだ。
ズレてるオマエは疑いもしなかったけど、そんなはずねーだろ?
付き合ってるオトコとオンナが、ホテル入って何もせずに服乾かして出てくるって。どこの世界の話だよ。
オマエはびっくりしたよな、俺が迫ったとき。
俺だってオマエとの初めての日はいろいろ考えないでもなかったけど、あれは神様がくれたチャンスだろーが。乗っからない手はねーだろ?
でもな、気づけよ、そんなこと。
誘われた時点で。
ほんとズレてんだよ。
あの日、オマエが震えてたのは、濡れて寒かったからじゃねえよな。
*
帰り道、優花は会社の近くのコンビニに入る。いつものコンビニとチェーンが違う。コンビニ開拓か?
やっぱりお菓子の棚に行く。
その前で立ち止まっている。
最近のチョコレートっていうのはややこしいと思ってたけど、ここにはシンプルなのがあるじゃねーか!
最近、見ねーぞ、そんな板チョコ。
優花、その板チョコを買え!赤いやつだ。
普通のチョコだろ?それは。
俺の祈りが通じたのか、優花は赤い板チョコを手に取って見ている。
買え!それを買え!
それは見覚えがあるぞ。
そーだ、あの日、俺がオマエにやったヤツだ。
オマエを運んだ病院の待合室で。
正確には宗一が、腹へったらこれ食ってがんばれって、俺に投げてよこしたやつだ。
俺が甘いのダメだって知ってたくせに。
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