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1枚の花びらが目の前にふわりと落ちてきて、手のひらに乗せるとピンク色をした桜の花びらだった。
『約束だよ。10年後───。』
今まで忘れていた約10年前の約束が、なぜ今になって思い出したのかわからない。
一瞬だけど10年前の実家近くの公園の桜並木の風景が浮かんで、視界が変わったように思えた。
けれど、すぐに我に返り今は携帯の確認が先だと自分に言い聞かせて、絵梨奈と一緒にアパートに置き去りにしてきた携帯を確認するために来た道を戻る。
自分の部屋にある携帯を改めて確認してみると、数十件という着信と同じくらいの数のメッセージが入っていた。
その半分は優志からの着信とメッセージで、「どうして?」「ちゃんと話し合おう」「電話に出てください」とあって、「また来るね」というメッセージは優志がここまで来てくれたのだと思う。
「美央?」
「絵梨奈、私、意味わからない。優志には他に好きな人がいるのに、今更何を話し合おうっていうのかな?」
次から次へと溢れる涙を見た絵梨奈がそっと抱きしめてくれた。
「輝に聞いてもらおう。美央は今は優志さんに会いたくないでしょ?」
「・・・うん。」
なんとか頷いた私の背中を絵梨奈は私が落ち着くまでずっと擦ってくれた。
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