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『みおちゃん』
10年前に私を呼ぶ男の子の顔と声を、今になって思い出す。
やっと絞り出すように呟いた私に気付いたのか、目の前の男性は振り返り、あの時の男の子の面影が僅かに残るその顔が綻んでいく。
ゆっくりと私のほうに近づいてくるのに、動かない身体は私に逃げるなと言っているようだった。
ふわりと抱きしめられ、私は逃げることを諦め、向き合うことを決める。
「美央、俺の話を聞いて。もう、逃げないで・・・。」
「優志が・・・ゆうくん・・・?」
「思い出してくれたんだね。美央は小さかったから、忘れているかもってずっと思ってた。ここにも来ないかもしれないって。」
10歳の時の私と今の私では随分と違うと思うけど、優志は私があの時の女の子【みお】だと確信しているように思える。
私は最近まで忘れていて、この話を優志にしたことはなかった。
「合コンの時に会った時も、私に気付いてたの?」
「気付いてたよ。あれはびっくりしたな・・・。学校に通うのに俺がいる近くに来ることは知ってたけど、まさか輝に無理やり連れて行かれた合コンに美央が来るとは思ってなかった。」
今、この人は私が学校に行くために、地元を離れることを知っていたと言わなかったか?
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