桜花の誓約

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もしかして両親が知り合いだとでもいうのだろうか。 一度も家で会ったこともないのに、それはないだろうと他の理由を探すけれど、何ひとつ浮かんでこなかった。 「どうして、私が学校に行くことも、ここを離れることも知ってたの?」 「それはね、俺がこの桜の木と繋がってるから。美央はここでどこの学校に行くとか、一人暮らしするとか語っていったでしょ。それは俺にも全部聞こえてきてたんだよ。」 桜の木と繋がってる・・・!?私が都心の専門学校に行くことは家族と担任とこっちの友達なら知ってるけど、そのどこかに優志の知り合いがいるとは思えないし。 桜の木に語りかけて、それが全部優志に聞こえてるなんて、そんなこと現実にあるものなの!? え?じゃあ、優志は人間じゃないとか?いや、でも・・・、普通の男の人に見えるし。 考えても考えても、私にはよくわからない。 「美央、いろいろと考えてるでしょ。混乱してることもあるのかな。でも、これだけは言わせて。」 優志はそう言うと、私を抱きしめていた腕の力を緩めて、そっと私の肩に両手を置いて視線を合わせてきた。 やっぱり優志が怖いとかそういうのは思えなくて、あの時の男の子と同じ優しい表情をしている。
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