桜花の誓約

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***** 「・・・お、・・・美央!?」 「・・・ん?・・・あれ?優志、どうしたの?」 日の光が差し込んでいて部屋の中は明るく、目を開けた私を覗き込む彼はホッとしたような表情をして、再び隣に潜り込み私を抱きしめてきた。 心地良い温もりをもっといっぱい感じたくて、自分から腕を背中に回して更に2人の身体を近づけると、優志の心臓の音が聞こえてきて安心感に包まれる。 「美央、魘されてたから。何か嫌な夢でも見た?」 「うーん。よく覚えてないんだ。何の夢見たんだろう。」 デザイナーになりたくて家から離れた専門学校に通うために、漸く一人暮らしを許された私は、同じ専門学校の友達に連れて行かれた合コンで、優志と出会い付き合い始めた。 私より5つ年上の優志は大学時代に企業した会社が成功して忙しいはずなのに、私の休みに合わせて会ってくれていて、優しく包み込んでくれるような雰囲気は大人だなといつも思う。 お腹が空いてきていい加減、朝食にしなければと起きることにした私は、優志の腕の中から抜け出して、ベッドから降りキッチンへと行く。 振り返り優志を見ると、やっぱり遠くを見るように、仰向けになって天井を見つめていた。 優志はこうして時々遠くを見るように、一点を見つめていることがあって、そんな姿を見るたびに、いつか優志がどこか遠くに行ってしまうような気がして寂しくなる。
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