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目が覚めて、今日は追いかけられなかったなぁと安心した。
だけどパグのあの目つきを思い出して、わたしはゆううつになる。
パグは悪夢を見るのは現実のできごとが原因だと言っていた。なら原因はアカネちゃんとケンカしたことだと思う。
どうやってアカネちゃんと仲直りしたらいいんだろう……。
アカネちゃんの怒った顔が頭に浮かんで、わたしはベッドの上で途方にくれた。
「ヒカリー、遅刻するわよー」
お母さんの声が一階から聞こえた。
アカネちゃんとケンカしてから、学校では他の友達と休み時間を過ごしていた。おしゃべりするのも、トイレに行くのも別の子たちで、なんとなく違和感がする。
「そういえばさー、なんでヒカリちゃんとアカネちゃんってケンカしてるの?」
ノートをくれたマイちゃんだった。
わたしは本当のことを言っていいのか迷った。
「えっと……わたしが約束破っちゃったから……。おそろいのノート使おうって言ってたんだけど……」
マイちゃんはそう言ったわたしをじっと見た。みんなも無言でわたしを見ている。
「えー! なにそれー!」
「それだけでアカネちゃん怒るって、ひどくなーい?」
「そーそー!」
思いもしなかった反応に、わたしはびっくりした。悪いのは約束を破ったわたしだと思ってたから。
みんなはアカネちゃんの悪口を言い続けている。
「ねーねーなんの話? いまアカネちゃんが走ってったけど」
教室に入ってきたサキちゃんが、わたしたちに話しかけてきた。みんなの口がぴたりと止まる。
「……聞かれちゃったかな」
「いいんじゃない? アカネちゃんが悪いんだし」
「そーそー」
気まずかった雰囲気が、いつの間にかいきいきとしたものになっていた。みんなは悪口で盛り上がっている。
こんなつもりじゃなかったのに……。
わたしは廊下の先が気になってしかたがなかった。
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