第一話 友情の悪夢

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 パグは思いっきり踏み込んで、影を真っ二つにした。ざぁっと影が消えていく。  あとに残ったのは、手のひらサイズの赤いチェックのノートだ。パグはおもむろにそれを食べた。お、おいしいのかな……? 「……さくらんぼっぽいな」  剣をさやにしまうと、パグはゆっくりとわたしのもとへと近づいてきた。  わたしはパグを見上げる。手が伸びてきた。 「よくがんばったな」  そう言ってパグはポンポンとわたしの頭を撫でてくれた。優しい手つきにわたしはほっぺたが熱くなる。心臓が早くなるのを感じた。 「パ、パグが助けてくれたから……」  うつむいてどうにかそれだけを言えた。パグの手が離れていって、ようやく心臓が落ち着いていった。 「ヒカリが心を強く持ってくれたおかげだよ。おまえの心には光の力があるんだな。優しい月のような光が」 「月の……光?」  パグは強くうなずいた。 「周り明るくなってるだろ? さっきまでヒカリの気持ちに引きずられて真っ暗だったけど、月の光の力であの影を追っぱらうことができたんだ」  明るくなった気がしたのは気のせいじゃなったんだ。 「わたし……みんなに違うよって言えなくて……」 「うん」 「アカネちゃんはそんな子じゃないのに……。ひどいことしちゃった……」 「うん」 「ほんとは大事な友達だったのに……」 「言えたじゃねぇか」  その言葉にわたしは顔を上げた。パグは優しくほほえんでいて、その笑顔にわたしはほっとした。 「俺に言えたんだ。アカネちゃんにも言えるだろ?」  胸の中に、さっきよりも強い光が灯ったようだった。パグにできるよって言われたら、本当にできそうな気がしてくる。これは月の光の力なのかな? 「わたし、がんばってくる」  パグはぐっと親指を立ててきた。 「ヒカリならできるさ。ほら、もう夜明けだ」  振り返ると、まばゆい光がわたしを飲み込もうとしていた。
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