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きっかけはささいなことだった。
「あっヒカリちゃん、それ使ってくれてるんだー」
誕生日にマイちゃんからもらったピンクの水玉のノート。いつもはアカネちゃんと一緒の赤いチェックのノートを使っていたけど、きのう使い終わっちゃってマイちゃんからもらったノートを持ってきたんだ。
わたしはちらりとアカネちゃんの方を見た。アカネちゃんはなにか言いたそうにこっちを見ていた。
チャイムが鳴っちゃったからアカネちゃんはなにも言わなかったけど、授業が終わってからアカネちゃんはわたしのところにやってきた。
「ヒカリちゃん、いつものノートは?」
わたしはアカネちゃんと目を合わせることができなかった。
四年生になったときに、アカネちゃんとした約束。四年生からは学習ノートを使わなくてもいいから、おそろいのを使おうねって約束したんだ。
でもわたしはおそろいのノートを買いにいく時間がなくて、もらったノートを持ってきてしまったのだ。
「もういい。勝手にすれば?」
そう言ってアカネちゃんは。自分の席に戻ってしまった。
わたしはなにか言おうとしたけれど、チャイムが鳴って先生が入ってきてしまったから、なにも言うことができなかった。
それからアカネちゃんとはしゃべっていない。
悪夢を見るようになったのは、そのころからだった。
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