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「お、来たな」
パグのその言葉で、わたしは夢の中にいるんだとはっきりわかった。
「こんばんは」
「はい、こんばんは。……どうしたぁ? なんか沈んでねぇか?」
パグは目ざとく気づいてくる。いつもどおりにしているつもりだったのに。
「なんでもないよ?」
そう言うけれど、パグは疑うような目を向けるだけだ。
「そうかぁ? なんかあったらちゃんと言えよ? 現実世界のことが夢に影響してんのは、よくあることなんだからな」
わたしはドキッとした。
うすうす気づいてたことだった。悪夢を見るようになったのは、アカネちゃんとケンカしてからだ。
それが悪夢を見る原因なんじゃないかなって、ちょっと思ってた。
「パグは……どうしてわたしのところに来たの?」
話を変えたわたしを、パグはじっと見た。わざとらしかったかな?
それでもパグはなにも言わずに、ふいっと前を向いた。
「本部のやつらが悪夢レーダーを監視してるんだ。レーダーが反応したら出動。俺はこの地区を担当してて、昨日が当番の日だったんだ。だからヒカリに会えた」
そう言うとパグはわたしの方を見て、ほほえんだ。
ずっと悪夢の中にいたから、笑いかけてくれる人がいるんだって思ったら、なんだかほっとしてしまった。
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