第一話 友情の悪夢

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「おいおい泣くなよー」  わたしはごしごし目をこする。 「……泣いてないよ」  そのとき、あたりが急に暗くなってきた。 「勝負はこれからなんだからな」  パグはわたしの腕を引いて立ち上がった。  その視線の先で、黒い影が集まり始めていた。 「そこから動くなよ……!」  パグは剣を抜いて駆け出した。一直線に影へと走っていく。 「パグ!」  影の近くまで行くと、パグは強く地面を蹴った。高く飛び上がって影の頭上に剣を向ける。 「逃がさねぇ、ぜ!」  だけど影はパグの剣をぎりぎりのところでかわした。  パグは片足で着地すると、また強く踏み込んだ。影もそれに対戦しようとする。影の一部が細長くなったかと思うと、パグの剣を受け止めた。 「やるじゃねぇか」  パグはにやりと笑ってそう言った。そしてぐっと押し返す。剣を弾かれて一瞬隙ができた影を、パグは真っ二つにした。 「やった、の……?」  わたしが尋ねたけど、パグは黙ったまま影が消えるのを見ていた。 「いや、これは分身だ」  パグは剣を振って影を散らす。今度こそ、影は消えてしまった。  くるりとパグがわたしの方に振り向く。突然すぎて、わたしはびくっとしてしまった。 「ヒカリ、こいつは相当根が深そうだぞ。おまえいったい何やったんだ?」  射抜くような視線に、わたしはなにも答えることができなかった。
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