君は髪フェチの王子

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バレンタイン当日の放課後、どうやって人目につかないようにチョコを渡そう、と頭を悩ませていたら、『いつものところに』とメッセージが入った。 最近、彼は図書館の奥にある書庫の鍵を手に入れたらしく、髪フェチの虫が疼くとそこに呼び出すのだ。 素直にそれに従う自分に 『だって嫌だって言って、理由を勘繰られたら困るし……それに、例の図書館の謎の女子。 あれが私だったなんて皆に言われたら大変だもの。 女子からどんな攻撃されるか分からないし……だから仕方ないの、うん』 等と言い訳を繰り返しているが、実のところ、彼と二人の時間の居心地の良さが中毒になっているかも知れない。 創立当時からある木造の書庫には天窓がある。そこから淡い光がこぼれて来る様はお伽話の世界に紛れ込んだような妄想を抱かせる。 そこで待つ美貌の王子が私の手を引き、天窓の下に立たせ、そして、編んだ髪を長い指で解き、梳かし広げ、淡い光に透かしてみては、また髪の触り心地を楽しむのだ。 平ちゃんの手は魔法みたいに私をお姫様にしてくれる……って、いけない。髪フェチの変態行為を楽しむ自分を制御するのが大変だ あ、何か言った? いけない、またボーッとなってしまってた。 そうだ、チョコだ。 「平ちゃん、これ」 ポケッ トに入れてあって良かった。 えっ?そんなに喜んでくれるの?
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