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「……っ……ふはっ、や、ははっ!ごめ……もう、ふふ、本当、とーめいさんはとーめいさんだなぁ。可愛いけど、いきなりどうしたの?」
「か……ど、どうもしない!」
「あ。もしかして……寂しかった?」
だから、なんで!
何でそう、察しが良いんだお前は!
待てニヤニヤと嬉しそうにするな、肯定してないから!
「とーめいさん」
「……なんだ?」
最近、実は藤堂には私の顔が見えてるんじゃないかと、そんな考えに陥ることがある。
いや、ナイのはわかってる。
透明病は稀少だが、世界が存在を認めた病気である。
藤堂にだけ見えるとか、そんな都合のいいモノではない。
ないのだが。
「大丈夫、ちゃんとここに、とーめいさんの隣に居るよ」
――どうして、そう。
的確な、言葉が出てくるのか。
じんわりと、体温を分け与えるような。
ほんわりと、暗闇を照らすような。
どこかに開いてしまった穴を、埋めるような。
言葉に表しがたい、多分言葉にする必要もない、感情が、胸に満ちる。
「…………、……」
いつの間にか、あんなに何が何だかわからなくなっていた内心も鼓動も毛細血管も、普段通りを取り戻していた。
もし、藤堂にだけは、見えるとしたら。
この笑みも、見えるといいのに。
私の心が、伝われば、いいのに。
「そっか。なら、うん。大丈夫」
『あなたに微笑む』とか。
マイナーだが、そんな花言葉が桜にはあったなと、思考に過る。
色々と、この病気と折り合いを付けて生きてきて、久しぶりに。
透明病なんかじゃなければ良かったのに、と、強く思った。
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