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「はい、これ」
――暫くして。
藤堂がそう言って私に差し出した包みに、首を傾げる。
同時に、声でも疑問を呈した。
「なんだ?これ」
「プレゼントだけど?」
訊かれることの方が不思議だ、と言うように疑問が返ってきたので、更に問う。
「私に?」
何でまた、と。
この時の私は本当に、本気でそう思った。
藤堂は露骨に呆れた顔になる。
「誕生日なんでしょ?とーめいさん」
ぽん。
これまでの人生でほぼ初めてに近い、納得して手を打ち鳴らす、と言う動作をした。
即ち、軽く握った右手で、左の掌を叩いてみた。
片手は薄手の手袋をしているため、実際の音はぽす、とかその程度だったが、大切なのは今の心情を伝えることである。
なるほど!
この時になって、漸く。
私は繁華街に向かって歩いていた並木道からこっち、現在に至るまでの藤堂の行動に合点が入った。
「まさかとーめいさん家って、誕生日祝いとかやらないの?」
「いや、もちろんやってたが。一人で暮らし始めたらこの時期は帰省してなかったから、ここ数年はさっぱりで」
大学で出来た幾人かの友人たちとは、そうそうそんな話題にはならないし。
まさか誕生日プレゼントを貰えるとは、まったく思っていなかった。
綺麗にラッピングされた包みを、「ありがとう」と告げて受け取る。
「藤堂、開けていいか?」
「いいよ。でも、慌てて用意したから、あんまり期待しないでね」
「貰えただけでもう嬉しいから、大丈夫」
隠す必要もない上機嫌な声色で、うきうきと返す。
こういうプレゼントって、貰ってすぐ開けたくなるのは何でだろう。
そのせいか、私は自分があげた場合も断然目の前で開けて欲しい派である。
反応見たいじゃないか。
袋状のラッピングを解けば、中から更に包装紙に包まれた小さめの箱が2つも出てきた。
おお、2つもある!
どちらから開けようか迷って、平たくて長方形の箱から開けることにする。
箱の中から現れたのは、文庫サイズで布製のブックカバーだった。
芯地以外は何枚か薄い布を重ねて作られているらしく、精緻な切り絵のように上の布が切り取られ、下に重ねられていた生地が覗いている。
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