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あれ、と、眼を瞬く。 瞼を閉じたからと言って、瞼も透明である私の視界には微かな揺らぎもない。 だからこの行為は、多分に発病前の癖を含む、無意味な動作だ。 ただ自分的に思わずやってしまう、ルーティーンに過ぎない。 それでも何となく、意識の切り換えには役立つもので。 いつから、か。 私が独りが虚しいとか思わないくらいには、頻繁に? 藤堂が。 ……藤堂、が。 「隣に居た……」 そして私はそれが、当たり、前、に。 なってる。 ぼぼぼっ、と。 透明病でも外にわかるんじゃないかとバカなことを考えるくらいの勢いで、顔に火が付いた。 思わず伊達眼鏡を外して、両手で頬を押さえる。 熱い。 誰が触っても分かるくらいに、顔表面の温度が茹だっている。 うわ、うわ、うわ。 なにコレどうしたのどうしよー落ち着こう私! え、なにうそ、いつの間に?いつの間にこんな、そんな、いや、藤堂が、藤堂だから、うん別に否定する必要ない気もするけどなんか、こう。え!? こんなに思考が大混乱していると言うのに、いや、大混乱しているからか。今日も今日とて透明病患者の必須アイテムである手袋が片方藤堂に奪われて素手であることに意識が行ったり、その素手で繋いでいた手の感覚が蘇っ……!! お、おおお、落ち着け。 こう言うときは深呼吸だ。とりあえず何でもいいから深呼吸してリセットして、何も考えずお茶を啜ろう。そうしよう! さあ吸ってー、吐いてー、吸ってー、吐いてー、うん、よし、大丈夫、大丈夫。お茶を。 「とーめいさん?……どうしたの」 っ、ぐっ、っ……!! はいにはいった。 ――念のためこれだけは言っておくが、駄洒落ではない。
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