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「あ、綾乃!おはよー。」
「おはよー!知穂。同じ社内なのに久しぶりだね。」
コフレの発表パーティが明後日に迫った朝。
前の部署の同僚と廊下で挨拶を交わす。
「綾乃、最近キラキラしてるね。秘書の仕事、上手くいってるのね。」
嬉しそうな顔で知穂が言う。秘書の仕事は孤独ではあるが、やり甲斐を感じている。
「高橋支社長がなんでも出来ちゃう方だから、置いていかれないようにするのに必死。上手くいってるならいいんだけど……。」
「俺は優秀な部下を持って幸せだよ。」
いきなり後ろから声がして、びっくりして振り返る。
「あ、高橋支社長、おはようございます!」
楽しそうな知穂の挨拶が響く。
「高橋支社長……おはようございます。」
恥ずかしくなって小さな声で挨拶をすると、爽やかな笑顔を返される。
私は知穂に控えめに手を振ってから、彼の後ろに付いて歩き出した。
支社長室に入り、仕事を始める。今日は来客も少ないため、明後日のパーティの最終確認を進めることにした。
来賓の資料を揃えたり、会場のセッティングや流れを確認する。
高橋支社長が関わる部分は全て、私も把握するように努めた。
「あ、綾乃ー!」
私は1人、食堂でランチを食べながら資料を読んでいた。顔を上げると、知穂と夏菜子がトレイを持ちながらこちらに歩いてくる。
「お疲れ様ー。ねぇ、一緒に食べようよ!」
久々に仲の良い同期に食堂で会えて、私は思わず嬉しくなった。
「うん!なかなか時間合わないもんね。あ、明日の資料?」
夏菜子が席に着きながら私の手元に目線を移す。
「うん。社外のイベントに今の立場で関わるのは初めてだから……なんだか緊張しちゃって。」
何度も見直した資料に手を触れて、私は苦笑いを浮かべた。
「相変わらず真面目ね、綾乃は。高橋支社長、あんまり厳しそうに見えないけど実は違うとか?」
知穂がおどけたように尋ねてきて、私は慌てて否定する。
「いやいやいや!全然。私が気付いてやるまで待ってて下さってる感じ……言われてからやるんじゃなくて、自分で気付きましょうってスタンスかな。」
「ふーん。楽しそうでいいなぁ。」
夏菜子がニヤニヤしながら相づちを打つのをみて、私は少しだけ違和感を覚えた。
だけどここは会社の食堂であることが頭を過って、問い詰めて話を聞くことはしなかった。
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