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「おかえりなさいませ」
家に帰ると、サチさんがいつも通りの笑顔で出迎えてくれる。
「…ただいま」
「どうかなさいましたか?」
「ん…ちょっとね」
サチさんは私が子どもの頃から西園寺家に仕えている。
住み込みで働く唯一のお手伝いさんで、歳はまだ40歳くらい。
幼いころに母を亡くした私にとって、母親のようなお姉さんのような存在だ。
もちろん、何でも話せるというわけではないけれど、この家での心の拠り所になっていることは間違いない。
「湊さま、今日、駅前に新しくできた洋菓子店へ行ってきたんですよ」
目をキラキラさせたサチさんが小首をかしげて私の顔を覗き込む。
「お茶、お付き合いいただけますか?」
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