プロローグ

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君が欲しい。 そんな想いのまま駆け出すことができたなら、二人の今は違っていたかな。 ねぇ、今、君の隣には誰がいる? 差し出された手を握って笑う君… 寂しいと駄々をこねてポロッと涙を流す君… くだらない話を真に受けて、それに気づいて頬を膨らませておこる君… その全てを見るのが俺だったらいいのになんて。 そんな感情を抑えるのに精いっぱいの毎日をあと何日過ごしたら、君を抱きしめることができるだろう。 どんなに強く想っても、どうしても手に入らないのなら、もう夢に出てこないでくれないか。 堂々巡りを続けて、もう18年。 たった一枚の写真の中で、君はまだ幼いあの日のまま。 微笑む君を見るたびに、あきれるほど胸が締め付けられる。 この想いのほんの一部でも伝えたら、それだけで君を苦しめてしまうことになるのかな。 なぁ、俺にそっと教えてくれないか。 君の心は今誰のもの? 教えてくれたら、もう人込みの中で君を探すのを俺はやめるよ。
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