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「朔ちゃん!」
西園寺義臣を押しのけるように湊が駆け寄って来て、そのあまりの可愛らしさについつい顔が綻んでしまう。
「カナ」
そう呼ぶと、湊が俺の胸に飛び込んでくる。
ギュッと俺にしがみついた湊は、数日前に抱きしめた時より一回り小さくなったことがすぐわかる程やせ細っていた。
こんなになる程、苦しい想いをさせてしまったことに胸が締め付けられる。
俺も力の限り抱きしめたい。
そう思った時、ふと視線を感じで我に返った。
西園寺義臣が俺を凝視している。
咄嗟に湊の背中に回しかけた手を引っ込めた。
この状況は非常に拙い。
そう言えば、湊との交際についてはまだ何の挨拶もしていない。
そもそも挨拶ができる状況じゃなかったんだけれど、流石に自分の娘がつい昨日までライバル企業だった一条の息子に抱きついているこの状態を見せつけられるのはおもしろいわけはない。
いや、ライバル企業の息子云々の前に、湊は男手一つで育ててきた大事な一人娘だ。
しかもこの可愛らしさ。
俺だったら発狂してもおかしくないと思うと、嫌な汗が背中を伝う。
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