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「おめでとう」
目の前のクリクリとした可愛い目を見て微笑んだ。
「もう、照れるからやめてよ~」
そう言って、桜子が笑う。
土曜の午後三時。
大学の頃よく通った喫茶店で私たちは数カ月ぶりに向かい合わせに座った。
照れるから止めてと言ったって、さんざん照れるようなことを言ったのは桜子だ。
背も高くて、言葉遣いも丁寧で、さりげない気配りができて…
あと何だっけ?
とにかく最近付き合い始めた彼はとっても素敵な人らしい。
彼について一通りののろけ話を聞いた後、私はちょっと呆れたフリをしながらからかった。
「白馬の王子様みたいな人なんだね」
「もう、そこまでは言ってないでしょ」
桜子は今さら顔を赤くした。
懐かしい二人での会話。
忙しい日々の中で、ついつい会う機会が減っていたけれど、やっぱりこの時間が私は好き。
「まだこれからだし」
桜子はうつむきながら目の前のカフェオレのカップを持ちあげる。
「あ、もう入ってなかった」
ペロッと舌を出す。
…可愛いな。
一連の流れの中で、ほんの一瞬だけ寂しそうな顔をする桜子。
そろそろ本題に入るのかな…なんて。
察しがよすぎるのは、一種の職業病かもしれない。
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