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場所を変えようと、「じゃあ、そろそろ…」と私が言うより先に
「あ、すいませ~ん!お替りお願いします」
桜子は素早く店員さんを見つけて手を上げる。
いやいや、もうお腹がちゃぷちゃぷ音をたてるくらい飲んでるじゃない。
珈琲やカフェオレばかりで、もう何杯目?
せめて場所だけでも変えたい。
珈琲の香に酔いそう。
「せっかく久しぶりに会えたんだもん。ね?もうちょっとだけ付き合って」
「わかったよ。でも彼氏ののろけ話もほどほどにね」
「ありがとっ」
そう言って、またペロッと舌を出す。
うん、やっぱり可愛い。
少し、その彼氏とやらが憎いなんて、自分に呆れる。
桜子は大学時代に知り合った。
くるくると変わる表情に、淀みのない素直な笑顔。
マッシュルームみたいな髪型は、小柄な桜子に良く似合っている。
小さなころからずっとロングヘアで、それ以外の髪型にする勇気のない私は、桜子の性格を表すような丸いフォルムのその髪型に密かに憧れている。
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