再会の10日前

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大学で出会った桜子は、専攻も違えば学部も違うけれど、一般教養の講義でたまたま隣に座った縁でこうして付き合いが続いている。 私は幼稚園からエスカレーターで小中高と進学し、大学も系列の大学へ進んだ。 桜子は私とは違って外部入学組。 ほんわかとした雰囲気からは想像できないほど努力家で良い意味で賢く、鼻にかけない聡明さは一緒に過ごすと嫉妬するほどだった。 腐れ縁の同級生たちは外部から一般受験してくる桜子のような学生を見下し、積極的に関係を持とうなどとはしなかった。 私と桜子を見て、付き合う人を考えた方が良いなどという余計な世話をやいてくる子までいたほどだ。 でも、私は桜子を知る前から外部から入ってくる子達の方が試験を正面から突破しているだけあって優秀だと素直に思っていた。 実際、偏差値だけ比較すれば、ぬくぬくとエスカレーターに乗っていたお嬢様よりも優秀な人が多かったし、何より努力してつかみ取った居場所にいるという自信があるからか、与えられた環境で胡坐をかいている私達よりもずっと輝いて見えた。 もちろん、私たちにも彼女たちとは違った悩みやリスクはあるのだけれど…。 「私みたいなエスカレーター組は、ただお受験を無難にクリアできる程度の知能と、お金があっただけなのよ」 桜子に出会ったばかりのころ、そんな皮肉を言ったことがある。 一瞬の沈黙で『しまった』と思った私へ、桜子はゆっくりとほほ笑んだ。 そして、諭すとも慰めるとも違う声で言ったのだ。 「自分を必要以上に貶める必要はないよ」 心を鷲掴みにされるとはこういうことか。 妙に冴えた頭の中で、そんなことを思った記憶がある。 この日から、自分の生まれ育った境遇について消極的に考えることをやめた。 そうかと言って、未来に明るい希望なんて持ってはいないけれど。 こうして私を理解して、偏見を持ったり僻んだりせずに対等に付き合ってくれる。 桜子の前では西園寺家唯一の跡取りとしてではなく、一人の26歳の西園寺湊(さいおんじかなえ)として振る舞えることが、何よりもありがたい。 こんなことを言うと 「かなえ~」なんて半分泣きながらハグしてくるだろうから、絶対に言えないけれど。
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