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「AKグループは、リゾートホテル展開を中心に不動産業をやってる上場企業っていうのは知ってるよね?」
「うん、一応は。そういう会社の人ともお付き合いがあるから話は聞くけど、うちみたいなところじゃ流石に取引はないから」
桜子は地銀の副頭取の秘書をやっている。
確かにあれくらいの企業になれば、副頭取とは言え地銀レベルじゃ付き合いはないだろう。
「単刀直入に聞くけど、何が知りたい?」
意地悪な聞き方をしたと少しだけ後悔した。
でも、仕方がない。
桜子の彼氏が朝倉慎之介と聞いて、私自身、かなり動揺していた。
中堅会社の跡取り息子程度なら『大丈夫だと思うよ』と慰めようと思った。
このご時世、政略結婚や家同士で決めた許嫁がいるなんてレアケースで、普通に恋愛結婚できる場合がほとんどだ。
けれど、相手が悪い。
AKグループほどの大企業になれば、暗黙の了解というものがある。
普通の女を選択肢に入れることなんてない。
対等な付き合いとまではいかなくても、それなりの付き合いができそうな子以外はふわりとかわして相手になんてしない。
遊び以外は…。
朝倉という男はどういうつもりなのか!
怒りが腹の底から湧き上がってくる。
いやいや、落ち着こう。
私が親のように腹を立てても仕方がない。
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