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朱里は酷く傷付いた顔をし、涙を流す
唇を噛みしめ、声を殺し静かに泣く
その様子をタンスの隙間から見ていた狂は
酷く胸が張り裂けそうな思いになった
数分すればピタリと泣きやみ、涙を乱暴に拭き
タンスの中から狂を出す
朱里は安心させるように微笑む
狂を優しく抱き上げ、ベットへ運ぶ
「胡桃が誰かに君の事を話してたりするかも
しれないから…ここに居るより外の方が安全だ……
だから、君をできるだけ安全な場所へ連れていく
お別れだね」
子猫だった狂は今では立派なオス猫だ
充分1匹でも生きていける
朱里は悲しそうな顔をしながら、
ごめんと何度も言いながらそっと狂を撫でる
親に気付かれないように外へ出て、
森へ連れてきた
普通に街へ返さないのは、胡桃に猫を見られたのが原因
本当は餌をあげてくれる優しい人がいる所へ
連れていこうと思っていたが、もし胡桃に見つかれば
誰かに協力してもらって捕まえる可能性が高い
胡桃は小さい頃からいつも俺の大切なものを奪っていく
「此処は俺の秘密の隠れ場所なんだ
此処には危ない生物は居ないから大丈夫」
近くには綺麗な川と、小動物達が隠れれる場所が沢山ある
有毒植物が殆どない綺麗な森
こんないい場所に人が来ないのは、
死人が多く出た森だから。
死亡原因はただ足場が悪い場所でバランスを
崩して、頭を強く打ち死亡した事が大半だ
しかし、死亡者が多かった為皆が入ろうとしなくなった森
そこまで広い森でもないため迷子にもなることも無い
ご飯は木の実や食べれる植物が沢山あるし
川には魚もいる
餌にも困らず、危険が殆どないここなら、
朱里のところに居るよりもずっと安全な場所だ
恐らく朱里の場所へ居続ければ、
朱里の大切な物だと思った胡桃は
俺が不利になるような嘘をついて
狂を無理矢理奪っていくだろう
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