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そう言い残し、クウは草むらに消えて行った。
しかし、鬼の地響きするような足音は鳴り止まない。
僕は佐山さんの手を引き、立たせる。
「早く、どこか隠れる場所を探そう!」
足音の大きさはだんだんと大きくなる。
佐山さんは息を切らしながらなかなか動かない。
「どうしたんだ、早く!」
時たま足音が止まるのは、こちらを探しているのだろうか。
「無理ですよ!さっきの声、聞きましたよね!?あんなのから逃げて、そんな行為なんて無理!」
また、進み出したようだ。
「それに捕まれば、この人達みたいに……」
僕は足音がだんだん大きくなってきたことに焦る。
しかし、佐山さんは話しながら涙を流していく。
「無理です……無理ですよ!本当に……やだ、なんで私が……」
女の子にここまで泣かれたのは初めてだ。
なんだか自分が悪者のように感じ、バツが悪い。
「だからって諦めるわけにー」
僕は話に夢中で気付かなかった。
足音が止んでいることを。
佐山さんの表情が止まっていることを。
僕は後ろを振り返ると、白い毛が体の全体に生えているゴリラのような生物が、ボロボロの歯を光らせて息を切らせていた。
体調は2メートルはするその霊長類のような生物は体はゴリラのように筋骨隆々なのだが、顔は30代くらいの男の顔をしており不気味さが際立つ。
目の焦点は合っておらず、ボロボロの歯には人の骨のようなものが挟まっていた。
その霊長類は咆哮を上げ、今から狩をせんと叫び上げる。
鬼と呼ばれた、その霊長類は野球選手並みに振りかぶり僕の頭を狙って拳を振り落とす。
僕は、その遅く大きい動作に大きく後ろに下がった。
「逃げるぞ!」
僕は佐山さんの手を無理やり掴み、走り出した。
鬼はにやりと笑い。屈伸運動のようなことをする。
僕は走りながら、周りを見渡した。
すると草むらを超えたところに崖が見える。それを中心によく見ると、崖はこの自然を囲むようにあり、ここが人口に作られた施設だと強く実感した。
鬼の足音が、また聞こえてきた。
僕は崖のところにある無数の洞穴の一つに佐山さんを押し込んで、2人で身を隠すことにした。
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