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しかしジェリーはそれでも真森から離れようとしない。いかにも必死なその形相からは、並々ならぬ気迫が感じられた。
「だってーーっっ!! もし警察にバレたら、私の命も危ないって、大森しぇんしぇいが……! ももももしかしたら、こここ殺されちゃうかも……! まだやり残したことがい~っぱいあるのにぃー!!」
「……」
そう言われてしまうと、真森も強く出ることができない。
いくら探偵業を営んでいるとはいえ、このたぬきも一応は一般市民だ。そんなジェリーを命の危険に晒すことは、警察の人間としてはばかられる。
「……百歩譲って、貴様から情報を得たことは黙っていてやる!」
しばらく考え込んだ後、真森はある一つのプランを提案した。
「貴様が依頼を断る。我々警察が大森の異変を察知する。それらの出来事に何ら関連性は無い。そういうことにしておけばいいだろう」
しかし、ジェリーの眉間に寄った皺は、消えるどころか深まるばかりだ。
「ぇ~~~……だだだって、私、もらった報酬の半分くらい、すでに使っちゃったし……」
ぼそっとこぼされた呟きを、聞き逃すような真森(とメロン)ではない。
「「……」」
ジェリーに向かって注がれる、じっとりと冷たい視線が二つ。
「どうして完遂していない依頼の報酬を事前に使い込むんだこの馬鹿者がっっ!!」
「ジェリー!! あれだけ……あれだけあった報酬の、半分……半分を既に使ってしまっただと……!?」
視線の主達からやんややんやと罵られ、ジェリーは両耳をおさえながら縮こまって事態の収束を待つ。
ひとしきりのことを言い終えてぜぇはぁと息をついている二人の姿を確認すると、ジェリーは自分の耳から両手を外し、暫しの間うーんと考え込んだ。
そして何を思ったか、とびっきりの笑顔と共に、ペ○ちゃんよろしく口端に舌を出し、おまけに片手の人差し指で己の頬をつついて見せる。
「というわけでー、今から依頼を無かったことにするなんてのは無理だゾ☆テヘペロ☆」
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