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「……」  もはや返す言葉も無いといった風の二人は、呆れを通り越してこのたぬきに殺意すら抱いているようだった。 「このアホダヌキ……リアルかちかち山にしてくれようか……」 「駿河湾に沈めるのもいいが、たぬき鍋も捨てがたい……。調理するなら、いい小料理屋を知ってるぜ……」 「ちょちょちょ、ちょっとやめてよー!! 私のことなんか食べても美味しくないからぁ!!」  うおんうおんと泣きながら必死で縋りついてくるジェリーに、真森が深い溜め息をつく。 「……どうしても、大森のパーティーに参加するのか」  問いかけられて、無言のままにこくりと頷くジェリー。  眉間に深い皺を寄せながら、真森は厳かな口調で言い放った。 「――この件に関しては、私が単身で捜査に乗り込むことにする。上への報告も、ひとまずは止めておこう。……腐っても一般市民である、貴様の命にはかえられんからな」  彼女はそう言って、今度こそ事務所の扉に手をかけた。 「アホダヌキはアホダヌキらしく、せいぜいその辺の奴らの目をひきつけておいてくれ。……くれぐれも、私の足を引っ張るんじゃないぞ」  揶揄するような言葉を残して、彼女は今度こそ、その場を後にする。  カツンカツンという硬質な足音が遠ざかっていくのを聞き届けて、ジェリーは深い深い溜め息をついた。
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