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『ちょっと、待ってな……』
スマホを押さえる音がして、静寂が訪れる。
その瞬間、聞かせたくない何かなんだろうって思うけど。
すごく気になって、耳を済ませてしまった。
『ちょっと……伊織、離せって。……バカっ…どこ触ってんだよっ。』
『もっ…と、こっち……』
微かに聞こえる大人な会話。
寝ぼけてんじゃねーぞって言葉のあとに、カサカサとシーツの擦れる音がして。
しばらくしてドアの閉まる音がした。
『……お待たせ。』
「…………………。」
『なんだよ、黙んなって。待たせたんだから、文句のひとつも言えって。」
すでに電話に出た事を、僕は後悔していた。
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