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リアルに感じる2人の関係。
ただ……廉ちゃんの声を聞きたい。
そんな僅かな願いにさえ、眠っていても伊織くんは存在を誇示してくるんだね。
ほんと……伊織くんの独占欲と存在感が、はんぱなさすぎて敗北感に侵食される。
それでもきっと伊織くんから距離を取って、洗面所辺りに陣取り、僕のために電話を繋げようとしてくれている廉ちゃんの優しさが嬉しい。
まぁ、ただ単に伊織くんの睡眠を妨げないようにって配慮からだろうけどさ。
だから廉ちゃんの中の僕のポジションを変えないように、僕は嘘をつく。
「ったく……とっくに寝てたって!もう目が覚めちゃったんだから、責任取ってよ。」
そう言ってわざとらしくため息を付けば、ホッとしたような空気と共に廉がくすっと笑った。
それからは電話が切れないようにと、矢継ぎ早に他愛もない話しをする。
声を聞きたかったはずなのに、気づけば機関銃のように喋っている自分。
あれこれと話していくうちに、空は白々と明けてきた。
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