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もしも……
本当に弱音を吐くような何かがあるのなら。
もし、淋しいのなら。
もし、壁にぶつかってるんだったら。
迷わず俺に言えばいいじゃん。
聞いてやるのは、いつだって俺だっただろ。
それとも役者での悩みか何かで、俺じゃダメなのか?
まぁ役不足であることは否めないけどな。
でもさ……
こんな時のために、俺はお前の隣にいたんじゃないのかよ。
どんな弱音であろうとも、まずは俺にしてこいよ。
ほんと、マジムカつく。
伊織を思っているはずなのに、出てくるのは悪態ばかり。
溜め息を付いて、最後に入っていた留守録に耳を傾ける。
何で気付いてやれなかったんだ。
伊織を責めるのは、違うよなぁ。
あいつの変化に気づいてやれなくて、支えてやれなかった自分が悔しくて情けなくなっていく。
「恋人失格じゃん……」
呟いて、目の前にいない伊織に思いを馳せれば、ふとTVから伊織の声が聞こえた。
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