温めてあげたい

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   *  *  *  *  * あいつが日本を発って、すでに2週間。 現在、伊織は海外ドラマの準レギュラーが決まって、海を渡って遥か向こうのでっかい大陸に長期滞在中の身だ。 ちょい役だけど、人気シリーズだと聞いている。 確か今日は衣装合わせだと、昨日の留守録に入っていた。 訪米当時はワイヤーアクションの練習だとか、英語の発音を直されるだけの日々だとか、ドラマを撮る以前の問題で、早く撮影に入りたいと意気込んでる声が留守録に入ってたっけ。 実を言うとその時差の関係で、きちんと電話を繋いでの会話は、この2週間一度も出来ていない。 すれ違いばかりの留守録にはその日あった仕事の内容と、頑張ってるから大丈夫って報告に、『愛してる』とのメッセージで必ず締め括られていて。 確かにちょっと疲れたような声だったけど、夕べのだってそれまでと何ら変わりはなかった……はず。 「伊織くん……アメリカで1人頑張ってんだろうけど、ヤバいんじゃないかな。だいたい時差があったって、どーにかすれば話しくらい出来るだろうに……伊織くんの事だから廉ちゃんには格好つけてたり、無理させたくなくてLINEやわざと留守録になる時間に掛けて、メッセージ入れてるんだろうけどさぁ。」 「わざとって言うか、お互いのためだろうが。仕方ねーじゃん。俺も仕事詰まってるし、伊織だって馴れないとこで寝不足なんてまずいし。お前だって分かるだろ?」 そりゃそーだけどさ……と、それでも不満そうに啓祐は口を尖らせた。 .
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