桃瀬と花川

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なんなんだよ! あいつは! 「あ……いってぇなもう!」 「欲しいと思ったものは、力尽くで手に入れようとしそうなのに……ここまでくると呆れるてっゆーか尊敬する。店長、愛されてますね!」 「はぁ?! 誰に?」 ここからガラス越しに売り場が見える。売り場に立って笑顔で接客する和真に岸が目線を向けた。 「なっなに言ってるんだ! 岸までおかしな事言うのか?」 「おかしな事じゃないですよ。和真の事ちゃんと見てあげてます? これは愛の鉄剣ですね」 和真に殴られた背中を岸が軽く叩いた。俺は短く悲鳴を上げ、岸を睨むとニヤニヤ笑った。 「さぁ! 明日はバレンタイン当日です! 店長、頑張りましょう!」 「おっお……」 俺はもう一度、ガラス越しに見える和真に目をやる。悠馬に「それは恋愛の愛情なのか、兄心からくるもんなのかよく考えろ」と咎められた事を思い出した。 分かってるよ……いや、俺は狡いんだ…… あいつは宮嶋家の天使なんだ。俺はそれをよく知ってる。和真が俺から自然と離れていってくれればいい。 だから俺から言わせないでくれ…… 「 俺は……おまえに嫌われたくないんだ」 「店長?」 「あ……うん、岸今いく」 ガラス越しの和真から目を離し、俺は岸と最後のショコラ作りに取り掛かった。
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