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「もしもし? あ……田中さん…はい! えっ! そうなんですか…えっと……すぐ出ます!」
通話を切って店を出た。近くの公園で待ってるって電話だった。
こんな遅くにマズイだろ!
公園の街灯の下に人影が見えた。
「田中……さん!」
清楚なボフカットの似合う彼女はやっぱり可愛いと思う。
「ごめんなさい。お忙しいのに……」
「…あの……その……俺……」
「分かってます。これ、受け取って下さい」
田中が差し出した紙袋は、有名店のバレンタイン限定ショコラだった。勉強がてらに食べたスィーツが俺好みだったのを覚えている。
「……でも」
「ここ……私の伯父の店なんです」
「え?!」
「悠馬さんがきっと岳さんも気に入ると思うって言ってたんで……」
あの野郎! さてはバレンタイン限定ショコラに目が眩んだな……
「はい、じゃ……ありがとうございます」
「いえ! あの……いいんです! 全然、深い意味とかないので……悠馬さんが勝手に……」
「あいつが勝手に?」
「……はい……」
嗚呼……なるほど……
なんだが田中が話し辛そうにしていた。大体の予想はつくが……
悠馬の鈍いやつめ!!
「なんだか変な事に巻き込んでしまって……すみません」
「いえ、気を付けて」
「またお店行きますね。塚本さんありがとうございました」
田中を駅まで送り、店に帰る道中、悠馬に言うべきなのかを考えていた。
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