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額から顎まですっぽりと隠れる白いマスクの男が、耳元で囁いた。マスクの中でくぐもった声が、アカリの耳の奥を震わせる。それだけで立っていられなくなりそうだった。
「望みがあるなら言って。大抵のことはしてあげられるから」
「望み‥‥ですか」
「あるでしょ。叩いて欲しいとか、縛って欲しいとか。もっとハードでも構わないけど」
想像を超えた男の言葉に、アカリは白いマスクを仰ぎ見た。
「私、初めてなんです‥‥」
「いいよ。そういう設定ね」
男の手が、アカリが纏ったローブの襟元に伸びる。
「違うんです。本当に。本当に、男の人とするの、初めてなんです」
男の手が止まる。仮面の奥で舌打ちしているのではないかと、アカリは思った。
「気持ち悪いですよね。やっぱり面倒臭いですよね。でも、誰かに見て欲しくて‥‥」
「見て欲しいって言われてもなあ。こういう店では、それだけじゃ済まないよ」
「わかってます。だから‥‥してください」
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