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『最初は、僕は君なんかどうだっていいと思ってた。
何処で死のうが、誰と結ばれようが関係ないと思ってたんだ。
なのにいつの間にか、君がいないとどうにかなってしまいそうなくらい、君に溺れてしまっている。
僕はいつか君を置いて去ってしまう。
君と共に生きられないのが何よりも苦しいけど、残される君の方がずっと苦しいよね。
だから、せめて僕がいなくても泣かないように、手紙を残すよ。
けど僕は文才なんて欠片もないから上手く伝えられるか分からない。
けど、これは僕の本当の気持ちだってことをわかって欲しい』
そこまで書いて、桜の花びらが文の上に一片落ちる。
僕は何気なく外の桜を見た。
はらはらと花びらが舞って、儚く鮮やかに地面に降り積もる。
少し淡い桃色と空の青をぼんやりと眺めた後、僕はまた机に向かう。
『…………桜は、まるで君のようだと思う。
美しくも儚くて、たった数ヶ月しか花を咲かせない。
その中で暖かく僕に微笑んで優しく包んでくれる。
僕は、そんな桜のような君が好きなんだ。
君は、気まぐれで、目を話すとすぐに何処かへ行ってしまうし、いつだって僕を振り回す。
もしかしたら、君は精霊か何かなのかな、なんて馬鹿な事だって考えてしまう。
君は、僕がこんな事を考えてるなんてきっと想像もつかないだろうね。
君が思ってる以上に、僕は君を想ってる。
多分、君が僕を想うよりずっと深く強く。
いつだって僕の方が君を想ってる気持ちが大きい。
分かってるんだそんな事。
それでいつものように、君は何も知らない顔で僕の名前を呼ぶんだ。
嬉しそうに、幸せそうに僕の名前を。
ねぇ、僕がもしいなくなってもさ、君だけは僕を忘れないで欲しい。
嗚呼、こうして手紙を書いて伝えるなんてやっぱり柄じゃないし、何だか照れくさいからそろそろ終わろう。
恥ずかしいから、君が見つけてくれることを祈って隠しておくことにする。
……そうだ、いつかさ』
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